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高周波焼入れ

高周波熱処理

03 技術情報・・・高周波熱処理

2.5.3 高周波焼入れの金属学

(1)急速短時間加熱オ-ステナイト化の影響

図2.5-6は、炭素鋼を高周波焼入れする場合のオーステナイト化温度の適正範囲を示す。たとえば焼入れ前の組織(前組織)がフェライト+パーライトの場合、加熱速度が速くなると、セメンタイトの分解、炭素固溶、拡散に時間がかかり、Ac3 変態点が高温側にシフトするため、オーステナイト化温度は、平衡状態図のAc3 変態点や炉加熱の場合に比べて高めに設定される。炭素鋼では約50℃以上、Cr,Mo,V,W等の炭化物生成元素を含む合金鋼では50~100℃以上高くする。

高周波焼入れは急速短時間加熱が特徴ゆえ、上述の理由で前組織の影響を受けやすい。図2.5-7は、種々の前組織のS45C鋼を、同じ条件で高周波焼入れしや場合の硬さ推移曲線を示したもので、オーステナイト化は調質(焼入れ・焼戻し)材が最も容易で、フェライト+パーライトの場合はフェライト面積率やフェライト幅が狭いほうが容易で、球状セメンタイトは最も難しい。そのために、高周波焼入れ時には、前組織の確認が極めて重要で、新しい鋼種の場合は、事前に、TTA(Time-Temperature-Austenitization)線図を作成するなど、オーステナイト化温度と焼入れ硬さのバラツキや組織との関係を把握しておくのが望ましい。

(2)表面焼入れの影響

1) 高い表面硬さ

図2.5-8は炭素量と焼入れ硬さとの関係を示したもので、同じ炭素量でも、高周波焼入材では炉加熱等の全体焼入材より高い表面堅さが得られ、耐磨耗性や疲れ強さの向上に役立っている。

2) 高い圧縮残留応力

高周波焼入材の表面には、高い圧縮残留応力が存在する。焼入れ後の内部応力(残留応力)は、急熱急冷過程での熱変形による熱応力と組織変化(変態)による変態応力が複雑に相互作用して生じる。図2.5-9に、高周波焼入材(丸棒)の残留応力分布の例を示す。図2.5-10は、圧縮残留応力の発生機構を模式的に示したもので、高周波焼入材の表面部では、急熱急冷によりマルテンサイト変態して硬化、膨張した表面と、急熱急冷による膨張収縮がない心部とが引き合い、心部が外側に引っ張られるのに対抗して、表面部が内側に引きこまれ平衡を保つが、この時、引っ張られる心部の引張残留応力と釣り合うように、引き込まれる表面部に圧縮残留応力が発生する。

表面圧縮残留応力の値は、高硬さの表面部では弾性限も高いため、心部の引っ張り残留応力に比べて大きく、硬化層より内側に入るにつれて減少する。

表面圧縮残応力の値は、高硬さの表面部では弾性限も高いため、心部の引っ張り残留応力に比べて大きく、硬化層より内側に入るにつれて減少する。この高い表面圧縮残留応力は、外力のくり返しによる亀裂の発生、進展を抑制するため、疲れ強さを向上させる。

(3)短時間加熱焼入れの影響

1) 微細組織と高強じん性

急短時間加熱ゆえに、加熱温度は高めでもオーステナイト粒の成長が進行しにくく、微細な組織や結晶粒が得やすい。図2.5-11は、ばね用Si-Cr鋼(SUP12)の高周波焼入れ焼戻し材の衝撃試験結果で、同じ硬さでは、結晶粒が微細なほど高いじん性を示し、延性、破壊じん性、耐遅れ破壊性、疲れ強さでも同様の傾向を示す。

2) 少ない脱炭とスケール酸化

加熱時間が短いことから脱炭やスケールがほとんど発生せず、疲れ強さの低下や不安定化の心配がない。

3) 少ない変形

短時間加熱だけでなく表面加熱、部分加熱の効果も合わせて変形は比較的少なく、加熱部位や硬化層深さ、冷却条件の選択、拘束焼入れによっても変形の調整が可能である。

4) 大きい元素分布の影響

前延の前組織の影響に加えて、合金元素の偏析の影響も大きく、より均一な焼入れ組織や硬さを得るためには、適切な前処理により、各元素をできるだけ均一に分散分布させておくことが望ましい。