金属熱処理受託加工・炎焼入れ・高周波焼入れ・プラズマ窒化

鉄鋼材料と熱処理条件

第2章

2.機械構造用鋼の種類

機械構造用鋼とは、一般機械、産業用機械、輸送用機械などの構造用材料として用いられるもので、キルド鋼から製造されており、使用する際には機械加工や熱処理が施される。構造用鋼としては、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼および焼入性を保証した構造用鋼がJIS規格でも規定されており、炭素含有量や添加されている合金元素によって分類されている。

 
 
 

(1)機械構造用鋼のJIS規格

機械構造用鋼としては、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼および焼入性を保証した構造用鋼がJISで規定されている。鋼種別のJIS記号は図1.2に示すように、炭素含有量および添加されている合金元素の種類や量によって英字および数字の組み合わせで構成されている。
最近では、国際規格(ISO)との整合性を図るために、鉄鋼材料全般にわたってJIS規格の再確認または改正が活発に行われている。機械構造用炭素鋼は2000年に再確認されており、H鋼や機械構造用合金鋼は2003年に改正されている。
 


機械構造用鋼に関する大きな改正点は、表1.1に示すように、機械構造用合金鋼の鋼種別に規定されていたJIS G 4102~JIS G 4106(1979)が統合廃止されてJIS G 4053(2003)に置き換えられていることである。しかも、SCM425が追加されて38種類から39種類になり、一部の鋼種については、ISO規格と整合するようにCr量とMo量の化学成分規制値も一部変更になっている。
H鋼については、SCM524Hが追加されて23種類から24種類になり、しかも一部の鋼種についてはMn量の化学成分規制値が一部変更になっている。
 

 

 

(2) 機械構造用炭素鋼

機械構造用炭素鋼とは、炭素(C)を0.10~0.60%含有するもので、一般にはSC材と呼ばれており、SとCの間に数字が表示されている。この数字は規定されているC量の代表値(中間値またはその近似値)を示しており、例えばS45Cの炭素量は0.42~0.48%である。このC量は平衡状態(完全焼なまし)のときの硬さの目安になるものであり、一般にはC量が多いほど高い硬さが得られる。この理由は鋼中では炭素は鉄と化合して硬質の炭化物(セメンタイト:Fe3C)を形成するためである。

 

(3) 機械構造用合金鋼

機械構造用合金鋼とは、0.12~0.50%の炭素のほかに表1.2に示すような種々の合金元素を適量添加したものである。これら合金元素の添加は鋼の性質に多大な影響を及ぼすため、使用する際には炭素量とその合金元素の種類や量が選定目安になる。
①高い硬さが必要なときはC量の多い鋼種を選ぶ
②高い引張強さが必要なときはC量が多く、CrやMoを含有する鋼種を選ぶ
③高いじん性が必要なときはC量が少なく、NiやMnを含有する鋼種を選ぶ
④高い引張強さと高いじん性の両方が必要なときはCr、MoおよびNiすべてを含有する鋼種を選ぶ
⑤大型部品で内部強度まで必要なときはMn、Cr、Moなどを多量含有する鋼種を選ぶ
例えば、要求される引張強さが800MPa以下の小型部品であればS45C程度でも良いが、800~1000MPaが必要であればSCM435やSCM440を、1000MPa以上が必要であればSNCM439を使用するほうがじん性まで加味した場合には有利である。しかし、いずれの場合も焼入れ焼戻しとの組み合わせによってはじめて性能が発揮されるのである。ただし、MoやNiを含有する鋼種の利用は材料コストが高騰するため、過剰品質にならないように考慮し、要求に応じた最適鋼種の選定と熱処理をうまく組み合わせなければならない。

 
 
 

(4) 焼入性を保証した構造用鋼

焼入性を保証した構造用鋼とは、化学成分はあまり重視しないで、焼入れした際の表面硬さだけでなく、内部への硬さの推移まで保証したものである。主な用途は肉厚の大型部品である。鋼種記号は、機械構造用合金鋼の記号の末尾にH(焼入性:Hardenability)を付けて表すため、通称H鋼とも呼ばれている。

例えば、図1.3はSCM435Hの表面から内部への硬さ推移曲線を示したものであり、上限と下限が規定されている。なお、この硬さ推移曲線はJIS G 0561の鋼の焼入性試験方法(一端焼入方法)によるものである。H鋼はこの硬さ推移曲線を重視しているため、図中に示したように、SCM435Hの化学成分のうちC、Mn、CrおよびMoの規制値はSCM435に比べて範囲が広い。

 
 


図1.3 SCM435Hの硬さ推移曲線および
SCM435との成分規制値の比較